先日、ふとライトハウス英和辞典の第6版を引いていたら、workmanの項目に次のような例文がありました。
A bad workman blames his tools.《ことわざ》
下手な職人はいつも道具に難癖を付ける。(「弘法筆を選ばず」の逆)ライトハウス英和辞典第6版より
弘法筆を選ばずは、大辞林によると、「本当の名人は道具のよしあしにかかわらず立派な仕事をすることのたとえ」とのことなので、この英文は「弘法筆を選ばず」の逆のことをあらわしています。
手元にあった同じく研究社の新英和中辞典第7版で同じくworkmanの項目を引いてみると、このようになっていました。
A bad workman quarrels with his tools.
新英和中辞典第7版より
quarrelは口論するという意味もありますが、ここでは不平を言うという意味です。
ことわざの表現がライトハウスと少し表現が違います。
quarrelを参照しろとのことなので、quarrelに飛ぶと、「下手な職人は道具に難癖を付ける」《諺》との記載がありました。こちらは「弘法筆を選ばずの逆」ではなく、「弘法筆を選ばず」と記載されていました。
確かに「弘法筆を選ばず」と”A bad workman blames his tools.”では表現は逆になっていますが、言いたいことは同じです。
では、「弘法筆を選ばず」を英語でストレートに表現したものはないかと思って調べてみたらありました。
無料で使える研究社のルミナス和英・英和辞典で、「弘法」と入れると、出てきました。
A true artist can paint with any brush.
(真の芸術家はどんな筆でも描ける)ルミナス和英辞典より
これはことわざではないのでしょうが、弘法筆を選ばずをほぼストレートに英語で表現しています。
追記
先日、kindleで講談社の「日英対照実用ことわざ辞典」というのを購入しました。
この本では、弘法筆を選ばずの英語版のことわざとして、The cunning mason works with any stone. (熟練の石工は石を選ばず)というのが第一にあがっていました。
この表現を手持ちのEPWINGの辞書で串刺し検索したのですが、ヒットしませんでした。
このcunningという単語には「器用な」という意味もありますが、辞書の最初に登場する意味は、「ずるい」とか「悪賢い」です。まさに日本語にもなっている「カンニング」のイメージです。
ちょっとややこしいのは、cunningという英単語には他人のテストの答案を盗み見るという意味はありません。日本語の「カンニング」に相当する英語はcheatingです。
この「日英対照実用ことわざ辞典」は1つのことわざに対して、類似のことわざ、複数の英語のことわざが書かれており、とても勉強になります。パラパラ眺めていると楽しいです。